タイガーI 開発こぼれ話

戦車の動きを可能な限り追求した1/16RC タイガーI 初期生産型。タミヤとしても初の試みで、その開発は試行錯誤の連続でした。その中からエピソードをいくつかご紹介。ホームページでしか読めないサイドストーリーをお楽しみください。

プロのアレンジャーがサウンドを生み出す

タイガーI の大きな魅力であるサウンド機能。エンジン音を録音するためにフランスのソミュール博物館まで足を運ぶなど、リアリティーには徹底してこだわりましたが、製品化にあたりその音をモデルの動きとシンクロさせる必要がありました。プログラマーの方にそのままデータ処理をしてもらえば済むのですが、収録した音の微妙なニュアンスが損なわれる可能性もあります。そこでプロのサウンドアレンジャーに一連の作業をお願いし、マイバッハエンジンの鼓動をそのままモデルに封じ込めることになりました。
生の音を極力生かしながらモデルのスピードに合わせエンジンサウンドを変化させるという、一筋縄ではいかない作業でしたが、さまざまな手法を使い納得のいくまでプログラミングを実行。つながりが自然になるよう微妙なアレンジは加えましたが、まるで実車を走らせているかのような臨場感あふれるエンジンサウンドを生み出すことができました。もちろんターレットの回転音や砲身の上下音、7.92mm 車載型MG34 機関銃の射撃音もリアルな響きを奏でます。

タイガーI は超信地旋回が可能?

タイガーI の開発にはミリタリースタッフとRCスタッフが特別チームを編成して取り組みました。RCスタッフはまず実車の構造を調べるところからスタート。取材写真や各種資料を読みこむほどに、タイガーI が技術的に進んだ戦車であることがわかってきます。そんな中、ギヤボックスの構造を調べていた設計者の一人が、あることに気づきました。「タイガー戦車は実は超信地旋回ができたんじゃないか?」。
タイガーI 重戦車は超信地旋回ができないというのが定説。当初はまさかと思っていましたが、機械的にミキシングされたメイン出力と舵取り用の操行ギヤボックスなどのメカニズムを見るにつれ、その疑いは濃くなるばかりでした。いろいろな資料を調べ、ついにはタイガーI の実車のレストアを行っているイギリスのボービントン戦車博物館に連絡、特別に話を聞かせていただきました。その内容は「動力用クラッチを切り、ステアリング用クラッチを繋いだ状態だと左右のキャタピラを逆に回すことができ、車体長の範囲での旋回が可能だ」というもの。これまでは不可能だと思われていたタイガーI の超信地旋回が構造的には可能だということが明らかになったのです。